入間人間さんのラノベ「時間のおとしもの」レビュー
時間に囚われた主人公たちの、哀れなお話し短編集。
携帯電波
1本目から肝が冷えるお話しでした。短編集はこうでなくっちゃ。
母子家庭で育った8歳になる小学生の「わたし」は自宅で古びた携帯電話を見つける。不意に着信があり受話したところ電話の相手は『わたし』だった。別れを告げて通話を終了すると、母は居なかった。
パラレルワールドものとタイムループものの融合でしょうか。個人的には母子家庭/父子家庭の辛さを象徴的に描いた内容なのではないかとも思います。異なる世界線に移ることで思いがけず亡き父を見られるも、反転して母の消失により『いらないよぉ。お父さんなんか』。元の母の居る世界へ戻る事には固執しても、父母両方の存在する世界をそもそも望まない点も興味深い(尺の都合かもしれませんが)。
因みに著者の作品のあとがきには自身の父母への感謝の言葉が必ず記載されている。著者が上記の考えの類を意識したかは不明だが、父母の大切さは誰より理解しているのかもしれない。
20代に入ってからの自宅シーンのモノローグは凄い……。比喩ばっかで理解が難しいし読むのに時間がかかりました。それ以前に怖い。さて、携帯電話をフライパンでバターと和えたところ電池が復活! 早速履歴を確認し通話。無事元の世界に戻ることができた。めでたしかと思いきや……。
未来を待った男
タイムマシンを作るのではなくタイムマシンを作る動機を導かせる為に勤しむのは新鮮だった。
これを映像化するのは難儀でしょうねえ。叙述トリックという奴だろうか。主人公の性別を安易に断定する事は眉唾だと思っていましたけど“やはり”という感じ。時間遡行モノ特有の伏線も面白い。
この物語では過去は塗り替えられるようだ。最後の三行は海に行く改変された『私』かな?
……とまあ、こんな感じの短編集がまだ幾つか続きますが感想はこれにて。とにかく時間は大切にしよう。
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